Stripeが昨年末に出したAgent Toolkit SDKに、いつのまにかMCP（ Model Context Protocol ）が追加されていました。前からMCPは気になっていた領域なので、試しに触ってみようと思います。

Stripe MCPとは

Stripe MCPとは、StripeのもつリソースをLLMが利用するためのコンテキストを伝えるプロトコルです。MCPそのものについては、公式のドキュメントをご確認ください。ざっくりとした理解では、「Stripeのドキュメントなどを検索したりStripe APIを利用したりして、AIエージェントが指示されたタスクを完了するためのツール」だと思っています。

StripeのMCPについては、2024年末にでたAgent Toolkit SDKの中で提供されています。実装コードをざっと読んだ感じでは、内部的にAgent Toolkitを利用しているみたいですね。

Cline ( Roo Code )でStripe MCPをセットアップしてみる

ということで早速触ってみましょう。MCPの設定は、ClineタブにあるMCP Serversから行います。新しくMCPを追加するので、Edit MCP Settingsボタンをクリックしましょう。

Cursorではフォームでしたが、Cline ( Roo Code )ではJSONで定義します。Stripe MCPのドキュメントにあるJSONを貼り付けましょう。もしsyntax errorが発生した場合は、このpull requestにあるJSONか、下にあるJSONを使ってください。

{
  "mcpServers": {
    "stripe": {
      "command": "npx",
      "args": [
          "-y",
          "@stripe/mcp",
          "--tools=all",
          "--api-key=STRIPE_SECRET_KEY"
      ]
    }
  }
}

stripeというMCPサーバーが追加されていれば設定完了です。

MCPに登録するStripeのコマンドについて

Stripe MCPはドキュメント検索から顧客・商品・料金データの作成・請求書の発行まで幅広い用途で使えます。しかし「開発時にそこまでの広い権限は渡したくない」という場面ももちろんあります。利用するAPIを制限したい場合は、toolsに許可したいアクションをカンマ区切りで追加しましょう。例えば下のコマンドでは、Customerデータのの読み書きとProductデータの書き込みのみが許可されています。

npx -y @stripe/mcp --tools=customers.create,customers.read,products.create --api-key=YOUR_STRIPE_SECRET_KEY

利用できる値については、ドキュメントのAvailable Toolsをご確認ください。

登録したMCPを使ってみよう – 実装調査編

MCPの設定が終われば、早速エージェントから使ってみましょう。ClineのチャットUIで、agentに対して次のような指示を出してみます。まずは実装方法を調べさせてみましょう。

MCPを使って、Stripeで１年間で自動解約するサブスクリプションの作り方を調べて

MCPの登録ができていれば、早速Stripeのドキュメントを探そうとします。承認を求められた時は、Approveしてあげてください。

Stripeが持つRAG？検索システムを使って情報を取得していることがみれます。生成結果を元に、Clineがコード生成まで始めてくれました。

生成されたコードがこちらです。そのまま動かせる形で実装してくれているので、動きのチェックにすぐ入れるのがいいですね。

app.post('/create-subscription', async (req, res) => {
  try {
    // First create a product
    const product = await stripe.products.create({
      name: 'Annual Membership',
      description: '1-year subscription that automatically cancels'
    });

    // Create a price for the product
    const price = await stripe.prices.create({
      product: product.id,
      unit_amount: 1000, // $10.00
      currency: 'usd',
      recurring: {
        interval: 'month' // Bill monthly
      }
    });

    // Calculate cancel date (1 year from now)
    const cancelAt = Math.floor(Date.now() / 1000) + (365 * 24 * 60 * 60); // 1 year in seconds

    // Create subscription that will auto-cancel in 1 year
    const subscription = await stripe.subscriptions.create({
      customer: req.body.customerId,
      items: [{ price: price.id }],
      cancel_at: cancelAt, // Auto-cancel after 1 year
      proration_behavior: 'none' // No proration on cancellation
    });

    res.json({ subscription });
  } catch (error) {
    console.error('Error:', error);
    res.status(500).json({ error: error.message });
  }
});

実装も明示的にやらせてみる

さっきは調査のみのつもりで、実装まで気を利かせてくれた形でした。ということで実装まで指示してみましょう。

Stripe MCPを使って、Stripeで１年間で自動解約するサブスクリプションを申し込む方法を調べて。node.jsでサブスクリプションを作るcheckout sessionを作成するAPIを実装して。

こちらもドキュメントの検索から始まります。

続いてコードの生成が始まりました。

最後に作業内容を報告してくれています。Cursorの時はCursor側にデフォルトで設定されているルールのおかげで日本語でしたが、Cline / Roo Codeの場合は英語でした。

ちなみに、実装コードのうち、subscription_data.cancel_atという値は存在しません。TypeScriptでコードを書かせると、型エラーがでてきます。とはいえどのAPIを使って、どのようなデータを設定すればよいかなどについては、初めてStripeを触る人にも参考になる道筋となっているのではないでしょうか。

さくっとコードを準備するところは、AI任せになるかも・・・？

Stripeなどの決済・サブスクリプション系の組み込みは、サービスのSDKの実装以外にもさまざまなタスクが発生します。APIを実装するアプリケーションのセットアップや、リクエスト内容からのSDKに渡すパタメーターの取得処理、レスポンスの整形などなど・・・。多少定型化されやすい部分もありますが、案件ごとに少しずつ内容が変わるなどの理由で、テンプレート化は難しかったりする現状もありました。

しかしAIを使った実装では、「今回はこういう形で作って」のように差分を含めた指示ができます。そしてMCPを使うことで、実装時にドキュメントを参照しながら作業させることもできます。もちろん実装されたコードが100点満点であることは少ないですが、それでも富士山の5号目まではバスで進めるような、そんな手軽さを手に入れることができるのではないでしょうか。

0か100かではなく、自分のやるべきタスクのうち、生成AIに任せれる部分はどこなのか。そんなことをMCPなどを触って覚える過程で考えていきたいなと思いました。